先に結論から
- 親が住んでいた家の土地(特定居住用宅地等)は、330㎡までの部分について、相続税の評価額を80%減らせる(国税庁 No.4124)。事業用は400㎡で80%、貸付用は200㎡で50%
- 取得する人の要件がある:配偶者、相続開始直前から申告期限まで同じ家に住み続けた親族、持ち家のない「家なき子」の条件を満たす親族。離れて住み、自分の家がある子どもが相続する実家は、原則として対象外
- 親が老人ホームに入っていた場合も、要介護・要支援などの認定があり、入所前の家が使われ続けていたなど、条件を満たせば対象
- 申告が要る:相続税の申告書に適用を書き、遺産分割協議書の写しなどをつける。申告期限までに遺産分割されている必要がある
親が住んでいた家の土地は、条件を満たすと、相続税の評価額を大きく減らせる仕組みがあります。小規模宅地等の特例です。ただし、「実家を相続すれば誰でも」ではありません。誰が相続するかで、使えるかどうかが決まります。国税庁の案内(タックスアンサー No.4124)で確かめました(確認日 2026-11-04)。
先に、押さえたいことを4つ挙げます。
- 親が住んでいた家の土地は、330㎡まで80%減(特定居住用宅地等)。
- 遠くに住み、自分の持ち家がある子どもが相続する実家は、原則として対象外。
- 親が老人ホームに入っていた場合も、条件を満たせば対象になる。
- 申告が要る。遺産分割が、申告期限までに終わっている必要がある。
特例の内容:土地の評価額を減らす
相続税は、土地などの評価額にかかります。この特例を使うと、一定の面積までの土地の評価額が減ります。
| 区分 | 限度面積 | 減額の割合 |
|---|---|---|
| 特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 特定居住用宅地等(親が住んでいた家など) | 330㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
- 対象は、建物または構築物の敷地である宅地等です(農地・採草放牧地は除く)
- 事業用と居住用を両方選ぶ場合の合計は、730㎡までです(貸付事業用宅地等がない場合)
- 居住用の宅地等が複数あるときは、主に居住していた1つに限られます
実家の土地が330㎡以下なら、全体の評価額が80%減ります。たとえば、評価額が3,000万円の土地なら、600万円まで下がる計算です(仮の数字)。これで、相続税がかからなくなる人も出ます。
実家が対象になる条件:取得する人しだい
親が住んでいた家の土地(①被相続人の居住用宅地等)で、80%減が使える取得者は、次のとおりです。
| 取得する人 | 要件 |
|---|---|
| 配偶者 | 取得者ごとの要件はなし |
| 同じ建物に住んでいた親族 | 相続開始の直前から申告期限まで同じ建物に住み続け、宅地を相続開始時から申告期限まで保有する |
| 上記以外の親族(いわゆる「家なき子」) | 次のすべてを満たす |
「家なき子」の6つの要件
別居していた子どもが使うには、次をすべて満たす必要があります。
- 日本国籍を持たない非居住者などでないこと
- 被相続人に配偶者がいないこと
- 被相続人と同居していた相続人がいないこと
- 相続開始前3年以内に、取得者・配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある一定の法人が所有する家屋に、住んだことがない(被相続人の居住家屋を除く)
- 相続開始時に、取得者が居住する家屋を、過去に所有したことがない
- 宅地を、相続開始時から申告期限まで保有する
つまり、自分の持ち家に住んでいる子どもが、一人暮らしだった親の実家を相続しても、原則として、この「家なき子」の特例は使えません。
親が老人ホームに入っていたとき
国税庁は、次の場合は、入所直前まで住んでいた家屋も「居住の用」に含まれるとしています。
- 被相続人が、要介護・要支援の認定を受けていた、または障害支援区分の認定を受けていた
- 所定の施設(有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅など)に入居・入所していた
ただし、入所後に、その宅地が事業用や他人の居住用に使われた場合は、対象外です。実家を貸すと、特例が使えなくなります(施設に入ったあとの実家)。
申告の要件と注意
- 相続税の申告書に、この特例を使う旨を書く
- 小規模宅地等に係る計算明細書や、遺産分割協議書の写しなど、一定の書類をつける
- 相続人が2人以上いるときは、特例を使う宅地等の選択に全員の同意が要る
- 原則として、申告期限までに遺産分割されている必要がある。申告期限(死亡を知った日の翌日から10か月以内)までに未分割なら、国税庁の「相続財産が分割されていないときの申告」(No.4208)を確かめる
- 相続時精算課税にもとづく贈与で取得した宅地等や、事業用資産の納税猶予を受ける宅地等は、対象外
実家が空き家になったときの落とし穴
- 別居の子が相続する実家は、「家なき子」の要件に当たらない限り、80%減が使えない。「空き家だから」「親の家だから」では使えない
- 相続してすぐ貸したり、他人が住んだりすると、要件を満たさなくなることがある
- 申告期限までに売ってしまうと、保有要件を満たさない(配偶者以外の親族は、宅地を申告期限まで保有することが要件)。ただし、売るときの税金(3,000万円控除や取得費加算)は、また別の制度です
- 遺産分割が決まらないと、この特例が使えない。話し合いが長引くと、相続税の申告で不利になることがある
売るつもりなら、相続税と譲渡所得の税金をあわせて考えます。
手続きの順番
- 親が亡くなった日と、死亡を知った日を確かめる(相続税の申告期限は10か月)
- 相続人と、実家の土地の面積・評価額を確かめる
- 誰が実家を相続するかを決める(特例が使えるか、先に確かめる)
- 遺産分割協議書をつくる
- 相続税の申告書に、特例の適用を書いて提出する
- 名義を変える:相続登記(3年以内)
相続税がかかるかどうか、特例が使えるかどうかの判断は、税理士に相談するのが確実です。
よく聞かれること
- 小規模宅地等の特例を使うと、相続税はいくら減りますか?
- 親が住んでいた家の土地(特定居住用宅地等)は、330㎡までの部分について、評価額が80%減ります。減る税額は、土地の評価額や、ほかの財産の額で変わります。
- 離れて住む子どもが、実家を相続しても使えますか?
- 原則として使えません。別居の親族が使う「家なき子」の要件には、被相続人に配偶者がいないこと、同居していた相続人がいないこと、取得者が自分の持ち家を過去に所有したことがないことなどが入っています。
- 親が老人ホームに入っていた場合は、どうなりますか?
- 要介護・要支援の認定を受けていて、所定の施設に入っていたなど、条件を満たせば、入所直前まで住んでいた家屋も居住の用として扱われます。ただし、入所後にその宅地が事業用や他人の居住用に使われたときは、対象外です。
- 遺産分割が終わっていなくても、使えますか?
- 原則として、申告期限までに遺産分割されている必要があります。未分割のときは、国税庁の「相続財産が分割されていないときの申告」(No.4208)を確かめてください。
- 申告しないと、使えませんか?
- 使えません。相続税の申告書に、この特例を使う旨を書き、必要な書類をつけて申告する必要があります。
出典
確認日:2026-11-04
※個別の判断は、税務署や税理士に確かめてください。