先に結論から
- 相続や遺贈で土地を取得した人が、法務局に申請して、国に引き取ってもらえる制度(2023年4月27日開始)。2023年より前に相続した土地も対象
- 建物がある土地、担保権のある土地、境界が不明な土地などは、申請そのものができない。実家の建物を壊して更地にしてから申請する形になる
- 審査手数料は1筆14,000円で、却下・不承認・取り下げでも返らない。承認されたら、10年分の標準的な管理費用を考慮した負担金を、通知から30日以内に納める
- 審査の標準処理期間は8か月。承認が出ない土地もある(不承認、令和8年9月末までの累計は103件)
実家を相続したものの、建物は傷んでいて、売れそうにない。使う予定もない。そんなとき、「相続した土地を国に引き取ってもらう」仕組みがあります。相続土地国庫帰属制度です。ただし、誰でも、どんな土地でも使えるわけではありません。実家の場合は、とくに「建物がある土地は申請できない」点が大切です。法務省の案内と、法律の条文(e-Gov 法令検索)で確かめました(確認日 2026-11-03)。
先に、押さえたいことを5つ挙げます。
- 申請できるのは、相続や遺贈で土地を取得した人。2023年より前の相続も対象。
- 建物がある土地は、申請できません。 実家を手放すなら、建物を壊してから申請する形になる。
- 申請しても承認されない土地がある(崖、地上や地下に物がある土地など)。
- 費用は審査手数料(1筆14,000円)と、承認後の負担金。手数料は、結果にかかわらず返らない。
- 審査は標準で8か月かかる。
どんな制度か
法務省によると、この制度は、相続した土地を使う予定がない、管理の負担が大きい、といった事情で手放したい人の希望に応えるものです。将来、持ち主が分からない土地が増えるのを防ぐ目的もあります。開始は2023年4月27日です。
申請できる人
- 相続または相続人への遺贈で、土地を取得した人
- 売買など、相続以外で取得した人は、原則として使えません
- 土地が共有のときは、共有者の全員が共同で申請します(相続以外で持分を取得した共有者がいても、相続で取得した共有者がいれば共同で申請できます)
- 制度の開始(2023年4月27日)より前に相続した土地も対象です。何十年も前に相続した土地でも申請できます
申請する前に、名義が相続した人になっている必要があります。親の名義のままなら、先に相続登記を済ませてください。
申請できない土地(却下になる土地)
法律(相続土地国庫帰属法第2条第3項)は、次のいずれかに当たる土地は、申請そのものができないとしています。
| 申請できない土地 | 実家で気をつける点 |
|---|---|
| 建物のある土地 | 登記がなくても、現に建物がある土地は申請できない。実家の建物を壊してから申請する |
| 担保権や、使用・収益を目的とする権利が付いている土地 | 抵当権、貸している土地など |
| 通路など、他人が使うことが予定されている土地 | 私道として使われている部分など |
| 土壌汚染のある土地 | 基準を超える特定有害物質がある土地 |
| 境界が明らかでない土地、所有権の存否や範囲に争いがある土地 | 隣との境界がはっきりしない古い土地 |
法務省のQ&Aでは、物置のような小さな小屋は、建物に当たらない場合もあるとされています。その場合は、管理に過分な費用や労力がかかるかどうかで判断されます。
申請しても承認されない土地(不承認になる土地)
申請はできても、国が承認しない場合があります。法務省は、通常の管理や処分に過分な費用や労力がかかる土地を、次のように挙げています。
- 一定の勾配・高さの崖があり、管理に過分な費用や労力がかかる土地
- 土地の管理や処分の妨げになる物品などが、地上にある土地
- 管理や処分のために除く必要がある物が、地下にある土地
- 隣の土地の所有者などとの争いがないと、管理や処分ができない土地
- そのほか、通常の管理や処分に過分な費用や労力がかかる土地
法務省の統計(2026年9月30日現在、速報値)では、申請が6,125件、国庫に帰属したのが3,231件、却下が86件、不承認が103件、取り下げが1,162件です。申請した全部が承認されるわけではないことが分かります。
実家が建物付きの土地のとき
実家を手放したい人がこの制度を考えるときは、次の順番になります。
- 土地の名義を、相続した人にする(相続登記)
- 建物を壊す(解体の前に確かめること。補助がある市もある。解体の補助を比べる)
- 建物滅失登記を、壊してから1か月以内に申請する
- 土地の状態を整える(境界の確認、地上の物の片付けなど)
- 法務局に相談して、申請する
- 審査(標準8か月)
- 承認されたら、負担金を納める
注意したいのは、壊したあとの固定資産税です。家を壊して更地にすると、土地の固定資産税の軽減(住宅用地の特例)が外れます(空き家の固定資産税)。申請して承認されるまでの間は、土地の持ち主のままなので、税金と管理は続きます。
また、解体して更地にしたあとに不承認になっても、家は戻ってきません。解体の費用を使う前に、法務局の相談で、土地が承認されそうかを確かめてください。
費用
| 項目 | 金額・中身 |
|---|---|
| 審査手数料 | 1筆につき14,000円。申請書に収入印紙を貼って納める。取り下げ・却下・不承認でも返らない |
| 負担金 | 承認されたあとに納める。国有地の種類ごとの、管理に要する10年分の標準的な費用を考慮して計算した額(法第10条) |
| そのほか | 書類の取得費用(印鑑証明書、戸籍など)、境界の測量や建物の解体の費用(必要なとき) |
審査手数料は、複数の筆(土地の区切り)をまとめて申請しても軽くなりません。筆の数だけかかります。
負担金は、土地の種類と場所で決まる
負担金の額は、土地の種目と、その土地がある区域(市街化区域、用途地域、農用地区域など)で決まります。一部の土地は、面積に応じて計算します。金額の表と自動計算のExcelシートは、法務省の「相続土地国庫帰属制度の負担金」のページに載っています。金額は、そちらで確かめてください。
- 負担金は、承認を受けたときの1回だけです
- 法務局から、負担金の額の通知と納入告知書が届きます
- 通知が届いた日の翌日から30日以内に、日本銀行や代理店などで納めます。法務局の窓口では現金を受け付けません
- 期限内に納めないと、承認は失効します(審査手数料は返りません)
- 納めた時に、土地の所有権が国に移ります(法第11条)
隣り合う土地で、種目が同じ場合は、2筆以上を1つの土地とみなして負担金を計算するよう申し出る制度もあります(たとえば、市街化区域外の宅地どうしは可能。宅地と森林の組み合わせは不可)。
申請の方法
- 申請先:土地がある都道府県の、法務局・地方法務局の本局の不動産登記部門。支局・出張所では受け付けていません
- 方法:窓口に提出するか、書留郵便やレターパックプラスで郵送します
- 相談:まず、土地がある都道府県の法務局(本局)に相談します。窓口、電話、ウェブのいずれかで、事前予約制です。1人1日1回、30分以内です
申請に必要な書類
| 書類 | 中身 |
|---|---|
| 承認申請書 | 様式あり(単独申請用と共同申請用) |
| 土地の位置・範囲が分かる図面 | |
| 境界点の写真、土地の形状の写真 | 隣との境界の点が分かるもの |
| 印鑑証明書 | 申請者の分 |
| 相続などを証する書類 | 登記名義人と申請者が違うとき(戸籍、遺産分割協議書など) |
そのほか、固定資産評価証明書や境界の資料を添えることもできます。
審査の期間と、その間のこと
- 標準処理期間は8か月です(法務省のQ&A)。事案によっては超えることがあります
- 審査では、書面の調査のほか、職員が現地を調べることがあります
- 申請者が審査の途中で亡くなった場合は、土地を相続した人が、相続のあった日から60日以内に法務局に申し出れば、手続きを続けられます(申し出がないと却下されます)
- 申請を取り下げることもできますが、審査手数料は返りません。売却の相手が見つかったときは、売る前に取り下げる必要があります(取り下げずに売ると、申請の権限がなくなり、却下されます)
- 取り下げ・却下・不承認になったときは、引き続き自分が所有者です
この制度が向いているのか:ほかの道と比べる
| 道 | 向いている土地 | 注意 |
|---|---|---|
| 売る | 買い手がつく土地 | 3,000万円控除などの特例がある。空き家バンクも使える |
| 貸す・使う | 場所が良い、使い道がある | 管理は続く。貸すと控除が使えなくなることがある |
| 管理を続ける | 決めるまで時間が要る | 管理の費用と手間がかかり続ける |
| 寄附 | 地方公共団体などが受け付ける土地 | 受け付けるかどうかは、自治体の窓口に確かめる |
| 相続放棄 | 相続前で、全ての財産を手放してよいとき | 3か月以内。相続財産の全部を手放す。放棄しても管理は続くことがある |
| 国庫帰属 | 建物がなく、承認される条件を満たす土地 | 手数料と負担金がかかり、不承認もありうる。審査に8か月 |
法務省のQ&Aは、売れない土地を手放す方法として、国庫帰属のほか、相続放棄、地方公共団体などへの寄附、民間の売買・贈与を挙げています。農地は農地中間管理機構、森林は森林経営管理制度の利用も示されています。
よく聞かれること
- 実家の建物が付いたままでも、国に引き取ってもらえますか?
- 引き取ってもらえません。建物のある土地は、申請そのものができない土地です(相続土地国庫帰属法第2条第3項)。建物を壊してから申請します。
- 申請の費用はいくらですか?
- 審査手数料が1筆につき14,000円です。承認されたあとに、負担金も納めます。審査手数料は、取り下げ・却下・不承認でも返りません。
- 負担金はいくらですか?
- 国有地の種類ごとの、管理に要する10年分の標準的な費用を考慮した額で、土地の種目と区域で決まります。面積に応じて計算する土地もあります。金額は、法務省の「相続土地国庫帰属制度の負担金」のページの表と自動計算シートで確かめてください。
- 審査にはどのくらいかかりますか?
- 標準処理期間は8か月です。事案によっては超えることがあります。
- 2023年より前に相続した土地でも申請できますか?
- できます。制度の開始(2023年4月27日)より前に相続した土地も対象です。
- 親の名義のままの土地でも申請できますか?
- 申請できるのは、相続や遺贈で土地を取得した人です。名義が亡くなった親のままなら、相続を証する書類(戸籍や遺産分割協議書など)を添える必要があります。先に相続登記を進めるほうが、手続きが分かりやすくなります。
- 負担金を払えなかったらどうなりますか?
- 通知が届いた日の翌日から30日以内に納めないと、承認は失効します。納付が強制されることはありませんが、審査手数料は返りません。
- 売却先が見つかりました。申請はどうしますか?
- 売る前に、法務局に連絡して取り下げます。取り下げずに売ると、申請の権限がなくなり、申請は却下されます。
出典
確認日:2026-11-03
- 相続土地国庫帰属制度の概要(法務省)
- 相続土地国庫帰属制度に関するQ&A(法務省)
- 相続土地国庫帰属制度の負担金(法務省)
- 相続土地国庫帰属制度の統計(法務省、2026年10月19日更新)
- 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律 第2条・第5条・第10条・第11条(e-Gov 法令検索)
※個別の土地が承認されるかは、土地がある都道府県の法務局(本局)に相談して確かめてください。