先に結論から
- 登記は、登記簿に書かれた名義人について行う。実家の名義が亡くなった祖父母なら、まず祖父母からの相続登記が必要(法務局の案内)
- 何世代も登記していない(数次相続)と、相続人が増え、必要な書類も多くなる。相談先は、管轄の法務局か司法書士
- 2024年4月1日より前に相続を知った不動産は、2027年3月31日までに登記する(法務省)。間に合わないときは、相続人申告登記を単独で出せる。ただし、申し出た人の分だけで、売るときは別に相続登記が要る
- 名義人が亡くなっていても、固定資産税は止まらない。1月1日に現に所有している人に課税される(地方税法343条)
実家の登記簿を見たら、名義が、亡くなった祖父母のままだった。親が相続したのに、登記をしないまま、その親も亡くなった。そんな実家は、珍しくありません。放っておくと、相続人が、世代ごとに増えて、手続きが難しくなります。
ここでは、法務省・法務局の案内と、法令(e-Gov 法令検索)で確かめた内容を整理しました(確認日 2026-11-04)。
先に、押さえたいことを4つ挙げます。
- 登記は、登記簿に載っている名義人について行う。名義が祖父母なら、祖父母からの相続登記が先。
- 世代が重なるほど、相続人が増え、書類も増える(数次相続)。
- 期限は、2027年3月31日(2024年4月より前に相続を知った場合)。
- 話し合いがまとまらなくても、相続人申告登記で、期限内の義務は果たせる。
まず、登記簿で名義を確かめる
実家の土地と建物の、今の名義人は、登記事項証明書で確かめます。法務局で取れるほか、「登記情報提供サービス」でも確認できます(法務局の案内)。
確かめること:
- 名義人は誰か(祖父母、すでに亡くなった親など)
- 土地と建物で、名義が違わないか
- 住所(昔の住所のままのことがある)
亡くなった親の名義だけでなく、ほかに不動産がないかを調べるときは、2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度が使えます(相続人が請求できる。書面なら1通1,600円。オンラインは、郵送受取1,500円、窓口受取1,470円)。詳しくは、相続登記の記事にあります。
名義が亡くなった人のままだと、何が起きるか
法務局の案内は、次のように書いています。
- 登記は、登記簿の名義人について行う。たとえば、亡くなった方の親が名義人なら、まず親からの相続登記が必要
- 何世代も相続登記をしていない場合(数次相続)は、相続人が増え、必要書類も多くなる
たとえば、祖父の名義の実家を、祖父の死後、父が住んでいたが登記しないまま、父も亡くなった場合。祖父の相続人(祖母、父の兄弟姉妹、父の相続人など)と、父の相続人が、同時に関わります。誰が、実家をどう受け継ぐかを、関係する全員で決める必要があります。
法務局が案内している、登記の種類
亡くなった名義人について、相続の根拠に応じて、手続きが分かれます。
| 相続の根拠 | 登記の手続 |
|---|---|
| 遺言書がある | 公正証書遺言、または自筆証書遺言の登記。自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が要る |
| 相続人全員の話し合い(遺産分割協議) | 所有権の移転の登記(相続・遺産分割) |
| 数次相続(相続が重なっている)で、遺産分割協議による | 数次相続の遺産分割協議による登記 |
| 法定相続(民法の割合で相続) | 法定相続の登記 |
どれに当たるかは、事情で変わります。管轄の法務局に相談するか、司法書士に頼むのが確実です(日本司法書士会連合会のページから探せます)。
期限:2027年3月31日
相続登記は、2024年4月1日から義務になりました。法務省の案内では、次のとおりです。
- 2024年4月1日以後に、相続を知ったときは、知った日から3年以内
- 2024年4月1日より前に相続を知った不動産で、まだ登記していないものは、2027年3月31日まで
祖父母名義の実家は、多くが、後者に当たります。期限まで、2026年11月4日から、約5か月です。
話し合いが進まないとき:相続人申告登記
数次相続は、相続人が多く、連絡がつかない人もいて、期限までに、遺産分割がまとまらないことがあります。そのときのために、相続人申告登記があります(法務省)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申し出る人 | 相続人のうち1人でよい(他の相続人の分もまとめて申し出ることもできる) |
| 確定が要るか | 法定相続人の範囲や、法定相続分を、確定する必要はない |
| 添付書類 | 申出書、申出人が相続人であることが分かる戸籍の証明書、住所を示すもの。法定相続情報一覧図の写しや番号を申出書に書けば、戸籍の証明書の添付に代えられる |
| 費用 | 登録免許税はかからない |
注意が3つあります。
- 申し出た人の分だけ、義務を果たしたことになる。全員が果たすには、全員がそれぞれ申し出る(連名での申出も可)
- 登記簿の名義人は、亡くなった人のまま。権利関係を公に示すものではないので、売る・担保に入れるときは、別に相続登記が要る
- 遺産分割が成立したあとの、「成立から3年以内の登記」の義務は、これでは果たせない
くわしくは、相続登記の記事にまとめています。
登記までの進め方
| 手順 | 中身 |
|---|---|
| 1. 登記事項証明書を取る | 土地と建物の、今の名義人と、権利の状況を確かめる |
| 2. 名義人から、今の持ち主までの流れを整理する | 誰が、いつ亡くなったか。誰が相続人か |
| 3. 戸籍を集める | 必要な戸籍の範囲は、法務局に確かめる。世代が重なると、集める戸籍が増える |
| 4. 遺言があるか確かめる | あれば、それに従う |
| 5. 遺産分割協議をする | 関係する相続人全員で、誰が実家を受け継ぐか決める |
| 6. 登記を申請する | 管轄の法務局へ。自分で出すか、司法書士に頼む |
| 7. 間に合わないとき | 相続人申告登記を、期限内に出す |
世代が重なると、戸籍の収集と、相続人の確定が、いちばん時間のかかるところです。期限に近づくほど、早く法務局か司法書士に相談するのが安全です。
名義が亡くなった人のままでも、固定資産税は届く
固定資産税は、登記簿の名義人に課されるのが原則ですが、名義人が、賦課期日(毎年1月1日)より前に亡くなっているときは、1月1日に実際にその土地や家屋を所有している人に課税されます(地方税法第343条第2項)。
また、市町村長は、名義人が亡くなっている土地・家屋について、現に所有している人(現所有者)に、住所・氏名などを申告させることができます(第384条の3)。申告しないと、市町村の条例で、10万円以下の過料が定められていることがあります(第386条)。
実家の税の通知が、亡くなった祖父母や親あてで届いていたら、市区町村の税務課に、現状を伝えるのが先です。詳しくは、空き家の固定資産税にあります。
登記が済まないと、できないこと
- 売る・貸す:名義が違うままだと、売買契約ができない(実家をどうするか)
- 解体の補助の申請:所有者や相続人であること、複数いるときは全員の同意を条件にしている市がある(解体の補助を比べる)
- 国に土地を引き取ってもらう制度:相続や遺贈で取得した人が申請する(相続土地国庫帰属制度)
よく聞かれること
- 実家の名義が祖父母のままです。親が相続したと思っていますが、登記は必要ですか?
- 登記簿の名義人が祖父母なら、祖父母からの相続登記が先です。2024年4月より前に相続を知った不動産は、2027年3月31日までに登記する必要があります。
- 何世代も登記していません。自分で手続きできますか?
- 法務局の案内では、相続人が増え、必要書類も多くなるので、管轄の法務局や司法書士への相談が勧められています。
- 相続人の一人と連絡がつきません。期限に間に合いません。
- 相続人申告登記を使えます。相続人のうち1人が単独で申し出られ、法定相続人の範囲を確定する必要はありません。登録免許税もかかりません。ただし、申し出た人の分だけで、売るときは別に相続登記が要ります。
- 名義が亡くなった人のままだと、固定資産税はどうなりますか?
- 1月1日に、実際にその不動産を所有している人に課税されます(地方税法第343条第2項)。市町村から、現所有者の申告を求められることがあります。
- 登記をしないと、過料になりますか?
- 正当な理由なく義務を果たさないと、10万円以下の過料の対象になることがあります。いきなり科されるのではなく、登記官の催告のあと、裁判所が決めます。相続人が極めて多い、争いがあるなどの事情は、正当な理由として扱われます(相続登記の記事)。
出典
確認日:2026-11-04
- 不動産の所有者が亡くなった(法務局)
- 相続人申告登記について(法務省)
- 相続登記の申請義務化に関するQ&A(法務省)
- 相続登記の申請義務化について(法務省)
- 地方税法 第343条・第384条の3・第386条(e-Gov 法令検索)
※個別の判断は、管轄の法務局や司法書士に確かめてください。